箱絵の魅力
2008年2月9日更新
僕の友人にへんちくりんなプラモデルばかり集めている人がいます。
最もへんちくりんだと思っているのは、多分僕だけで本人は至って真剣です。
彼曰く、コレクションの基準は箱絵なのだそうです。
中のキットの出来具合いよりも、箱絵の良し悪しが購入意欲に影響するのだそうです。
初めに聞いた時にはそんなバカなと思ったものですが、しばらく経って、そう人の事を言えないなと考える様になりました。
僕はニチモと言うプラモメーカーが昔から好きです。
もともと軍艦が好きだった事もあって、ニチモの1/200や、1/500スケールの軍艦キットに小さい頃から憧れていました。
手頃な1/500スケールシリーズと、今でも日本の軍艦プラモデルのトップに君臨しているビッグスケール『大和』を輩出した1/200スケールシリーズ。
初期の1/500スケールシリーズの製品はお世辞にもすばらしいとは言いかねるキットでしたが、残された正式図面から開発された航空戦艦『伊勢』、『日向』は当時素晴らしい出来でした。(優秀なキットの揃っている現在の目から見るとディティール等はお世辞にも素晴らしいとはいえませんが・・・・)
その後、重巡『妙高』、『足柄』、『那智』、『羽黒』、空母『翔鶴』、『瑞鶴』の発売に至っては、各艦ごとの識別点までモデル化した精密なプロフィールには心底驚きました。
既に30年以上も前の話になりますが、少なくとも当時艦船模型に関しては、タミヤやハセガワよりもニチモのキットの出来の方がはるかに上でした。
ですから、その後静岡の4社が協力して始めた1/700ウォーターラインシリーズは、ニチモのキットに比べれば足元にも及ばない様な存在でした。
これらニチモのキットは、故森恒英氏(軍艦の研究家としても有名で『軍艦メカ図鑑』シリーズや、『艦艇メカニズム図鑑』を執筆しています。)の優れた設計と、高荷義之画伯の手による素晴らしい箱絵(ボックスアート)に支えられていた気がします。
1/500シリーズでも確かに初期の戦艦『大和』、『武蔵』、『長門』、『陸奥』、重巡『高雄』、『愛宕』、『鳥海』、『摩耶』はプラモデルとして決していい作品ではありません。でも、その箱絵だけは鑑賞にたえるだけの素晴らしい迫力のものばかりです。
先に書いた航空戦艦『伊勢』、『日向』となるとキットの出来もさる事ながら、箱絵が更に素晴らしいものでした。
中でも航空戦艦『日向』の箱絵ときたら、捷一号作戦時のすさまじい対空戦を描いたもので、これだけでこのプラモが欲しくて欲しくてたまらず小遣いを貯めて買ったほどです。
最近、大阪日本橋の模型店でこのパッケージのキットに\10,000-以上の値がついているのをみてビックリしました。
確かに航空戦艦『日向』のキットはいまも再販されていてキットは発売されているのですが、箱絵が他の戦艦との共通箱となってしまって昔の魅力がなくなっているのはとても残念です。
またいくつかの箱絵についていえば、基となった写真が存在するものもありますが、いずれの箱絵にしても、実物の写真以上の絵に仕上がっているのには驚かされます。
一時期、ニチモの1/500スケールの戦艦は金型補修に伴って、ちょうど1/700ウォーターラインシリーズの様な箱絵に変更された時期がありました。
しかし、売り上げが伸び悩んだせいか、まもなく基の箱絵が復活しました。
僕が1/700ウォーターラインシリーズに、結局手を出さず仕舞いだったのは、ニチモのキットに比べイマイチだった当時の静岡4社のキットの完成度、金型技術の低さや、1/700スケールという中途半端なスケールを採用していた事もありますが、よくよく考えてみると、ひとえにあの箱絵の持つ迫力の差だったような気がしてなりません。
だから、タミヤ、ハセガワのキットの製品の良さは認めているものの、1/350や1/700スケールといった中途半端なスケールを採用している事、そして何よりも箱絵そのものに魅力を感じない為、買う気にはなれないのです。
高荷画伯の絵もかなりの資料が発見された今の目からみると、多少デフォルメされてアンバランスに感じるものも無い訳ではありません。
しかし箱絵が購入意欲をかきたてる為のものであるとすれば、これほど成功している例は無いと思います。
双熊堂本舗でもF1のガレージキットを製作した場合、実は一番にやってみたかった事が、箱絵でした。
箱絵に少しでも魅力を感じてそのマシンの模型を作りたいと思ってくれたら・・・
どんなにうれしい事でしょうか?
1/500 スケール 戦艦 大和 箱絵
1/500 スケール 戦艦 武蔵 箱絵
1/500 スケール 戦艦 長門 箱絵
1/500 スケール 戦艦 陸奥 箱絵
1/500 スケール 航空戦艦 伊勢 箱絵
1/500 スケール 航空戦艦 日向 箱絵
ご覧頂ければ一目瞭然。
これはどれも本当に素晴らしいグラフィックアートだと思います。
僕はこのアートを手にしたくて、プラモデルを買った日がありました。
お断り:上記画像はニチモのキットからスキャンして掲載しました。
ニチモ 1/500 シリーズ 航空戦艦 伊勢型 パッケージの変遷
上:発売初期のもの(箱は小さくなってからのもの)
中段:新パッケージ(正直言ってガッカリな絵)
下:現行品(ガッカリながらもまだ頑張ってくれているかな?)